この記事は、誰でも再現できる原因調査と対処手順をまとめた実務ガイドです。
ムームードメインを使っている方はもちろん、他社DNS/レンタルサーバーでも同じ考え方で解決できます。
この記事でわかること
- 「550 5.1.1」などの代表的な送信失敗エラーの意味
- 原因の9割を占めるMX(メールの行き先)設定ミスの見つけ方
- MXToolbox等の無料ツールでの調べ方と、DNS(MX)修正の具体手順
- ムームードメインの設定ポイント/その他レンタルサーバー共通の注意点
- 作業後の動作確認、再発防止チェックリスト、よくある落とし穴
まず症状を確認:よく見るエラーメッセージ例
典型例
550 5.1.1
User unknown / No such user553
Mailbox name not allowed450 / 451
Temporary local problem503 5.5.1
RCPT first(セッション順序の副次的エラー)
意味(要約)
- 宛先が見つからない / そのサーバーに存在しない可能性が高い
- DNSのMXが別の事業者を向いている(混在/優先度の誤り)
- アカウント未作成・停止中・容量超過などローカル要因
最短5分チェック:原因のあたりを付ける
- 社内の誰にでも送れないか? → 宛先固有?ドメイン全体?を切り分け
- 外部アドレス(携帯・フリーメール)からも届かない? → 受信側の問題色濃厚
- 最近DNSやメールの契約を変更していないか? → MX混在の黄信号
- DNSのMXを確認(後述)→ “どのメール事業者に配信しに行っているか” をまず可視化
DNS(MX)を可視化:MXToolbox等で現状を知る
代表的な方法は2つ。GUIツール(例:MXToolbox)と、コマンド(dig
/ nslookup
)。
方法A:GUIツール(MXToolbox公式サイト)
DNSやメール関連の診断に便利なツールが MXToolbox(公式サイト) です。
無料で利用でき、MXレコードだけでなく、ブラックリストチェックやSMTPテストも可能です。
MXToolboxの使い方(MX Lookup)
- MXToolbox公式サイトにアクセス
- 検索ボックスに調べたいドメイン名を入力(例:example.com)
- 右側のプルダウンから「MX Lookup」を選択し、検索を実行
- 結果として、優先度(Pref)・ホスト名(メールサーバー)が一覧で表示される
- 異なる事業者のMXが混在していないか、意図したメール事業者のMXだけが表示されているかを確認
例えば、A社のメールを利用しているのに、B社のMXも残っている場合は要注意。優先度の小さいMXが優先され、誤ったサーバーに送信されてしまいます。
方法B:コマンド(管理者向け)
$ dig +short MX example.com
10 mx.mail-provider.example.jp.
20 mx2.mail-provider.example.jp.
$ nslookup -type=mx example.com
example.com MX preference = 10, mail exchanger = mx.mail-provider.example.jp
example.com MX preference = 20, mail exchanger = mx2.mail-provider.example.jp
ここが肝:利用するメール事業者が1つに決まっているなら、MXはその事業者のレコード「だけ」にしてください。異なる事業者(たとえば “A社のMX” と “B社のMX”)を混在させると、優先度の高い方へ配信され、そちらにアカウントが存在しなければ 当然「存在しない」扱いで弾かれます。
原因別:最短の対処方針
状況 | よくある原因 | 対処の方向性 |
---|---|---|
「550 5.1.1」宛先不明 | MXが別事業者を向いている/混在・優先度ミス | MXを正しい事業者のみに統一。優先度を正(数字が小さいほど優先)に調整 |
特定アドレスだけ届かない | 受信側でアカウント未作成・停止・容量超過 | 受信側の管理画面でアカウント状態と容量を確認・復旧 |
設定直後に不安定 | DNS伝播中 | 数分〜24時間の伝播待ち。段階的に再テスト |
迷惑メール扱い | SPF/DKIM/DMARC未整備 | MX修正後に認証レコードも整える(テンプレ後述) |
ムームードメインでの設定ポイント(一般化)
ムームードメインのムームーDNS(カスタム設定)を使う場合の典型的な流れです。具体的な表示名やボタン名は画面仕様で多少異なることがあります。
- ログイン → 対象ドメインを選択
- ムームーDNS設定変更 → カスタム設定 を開く
- MXレコードの現在値を確認(異なる事業者が混在していないか)
- メールを使う本命の事業者だけが残るように編集
- 不要なMX(他事業者のもの)は削除
- 必要なMXを追加/修正(例)
種別:MX ホスト名:(空欄 または @) 値 :mx.mail-provider.example.jp. 優先度:10
末尾の「
.
」を要求するコントロールもあります(FQDN)。入力仕様を確認してください。 - 保存 → 反映を待つ(数分〜最大24時間)
その他レンタルサーバー/DNSの共通手順
- DNSをどこで管理しているか(ドメインレジストラのDNSか、サーバー側DNSか)をまず把握
- メール事業者のドキュメントで正しいMX値と優先度を確認
- 旧事業者のMXが残っていないか必ず見直す
- ルートドメインのMXだけでなく、サブドメイン運用時のMX(必要なら)も整合性を取る
SPF/DKIM/DMARC:MX修正後に“送達品質”も底上げ
配信先不明(550 5.1.1)の解消はMXで行いますが、その後の迷惑メール回避・到達率改善には認証レコードが効きます。
SPF(送信元の許可リスト)テンプレ例
種類 :TXT
ホスト:@
値 :"v=spf1 include:spf.mail-provider.example.jp ~all"
DKIM(改ざん防止の署名)
多くの事業者で、管理画面から公開鍵(TXT)を案内されます。
例:selector1._domainkey.example.com
にTXTを追加。
DMARC(ポリシー宣言)テンプレ例
種類 :TXT
ホスト:_dmarc
値 :"v=DMARC1; p=quarantine; rua=mailto:dmarc-report@example.com; pct=100"
まずは p=none
(監視)から始め、問題なければ quarantine
→ reject
へ段階的に強化がおすすめ。
修正後の動作確認:二重三重にチェック
- MXToolbox等で不要なMXが消え、意図したMXのみになっているか確認
- 外部アドレスから自分のメールへ送信テスト
- 逆方向(自分 → 外部)も送信テストし、バウンスが出ないか確認
- 迷惑メールフォルダも念のため確認
トラブル時の“決め打ち”チェックリスト(保存推奨)
- [ ] MXは意図した1社に統一されている(混在なし)
- [ ] 優先度は最も小さい値が本命になっている
- [ ] メールアカウントは受信側で作成・有効になっている
- [ ] 伝播待ちの時間を考慮(最大24時間)
- [ ] SPF/DKIM/DMARCを整備(到達品質)
- [ ] 外部⇄自ドメインの双方で送受信テストを実施
よくある質問(FAQ)
Q. MXを2社分残して“冗長化”してはダメ?
基本はNGです。異なる事業者のMXを混在させると、優先度の高い方へ投函され、そちらに受信アカウントが存在しない限りは不達になります。冗長化は同一事業者内の複数MX(一次/二次)で実現しましょう。
Q. 伝播中かどうか見分けるには?
複数のネットワーク・端末・DNS診断サイトで結果を比べましょう。
会社のネットワークで古い結果が残っている場合もあるため、モバイル回線や別回線でも確認すると早いです。
Q. SPF/DKIM/DMARCは必須?
配信に必須ではありませんが、迷惑メール判定の回避・到達率向上のため強く推奨です。特にDMARCは段階導入が安心です。
まとめ:原因の9割は「MXの向き先」と「混在」
- まずはMXを可視化(MXToolbox等)→ “どこに配信しに行っているか” を確認
- 使う事業者のMXだけを残し、優先度を適切に設定
- 修正後は伝播待ちと双方向テストで確実に仕上げる
- 最後にSPF/DKIM/DMARCを整え、再発防止・到達率向上までやり切る
※参考にされる場合は自己責任でお願いします。